ぱんつにたいする女子のきもち
「あーべくんっ」
めずらしいことに(ほんとうにめずらしく)野球部の練習が休みだと、前の日の夜にメールがきた。
はそれで、もう嬉しくてたまらなくなり、翌日着ていく服をベッドに並べて吟味したり、いつもより丁寧にスキンケアをしてみたり、新しく買ったヘアピンを頭に当ててみたりして、大層楽しく夜を過ごした。
そして今、コンビニで買ったアイスを片手に、阿部家の玄関に立っている。
「あそびにきた!」
「見りゃわかるよ」
「アイス買ってきたの!」
「サンキュな。あがれよ」
彼のありがとうが心にしみる。
日焼けした後姿について玄関にあがり、彼の部屋へと向かう。
「座ってて。飲みもんもってくるから」
「ありがとう。はやくかえってきてね、アイスとけちゃうから」
「おう」
促されてベッドに腰掛け、コンビニのビニール袋をテーブルに置き、あたりを見回す。
すると、おそらく母親がおいていったのだろう、洗濯されてきれいにたたまれた彼の着替えがベッドの端に置いてあった。
「あべくんの服だあ…」
まだ戻ってこないよね、と一応ドアの方を確認してから、そっと一枚、それを手に取る。
水色のボーダーシャツだ。
「かわいい…あべくん、これ、着てるんだなあ」
思わずにまにましてしまう。
「えへへ…いつかあべくんと結婚したら、
がこれ洗濯して、たたんで、置いておくんだもんね」
勝手に脳内で新婚生活に思いをはせる。
ひとしきり妄想に浸った後で、服を戻そうとそこを見ると、それが、あった。
「…!」
飾り気のない紺色の、それは、いわゆる、
「(あ、あべくんの、ぱんつ…!)」
二人は付き合って三か月、早いカップルなら済ましているであろうことも、部活の忙しさやお互いの性格もあって、まだまだ初心な関係だった。
故に、
がそれを見るのははじめてなわけで。
「(…ちょっとだけなら…ばれない、よ、ね)」
手に持っていたシャツを横に置き、そーっとパンツを持ってみる。
「(な、なんて変態くさいんだ、
!)」
しかしこの気持ちを誰が抑えられようか。
男は狼だというが、女だってそれなりに狼なのだ。
特に好きな人のことに関しては、なんというかその、がっつくというかその、
「(と、とにかくあべくんのぱんつだよ!貴重品だよ…国宝だよ!)」
パンツを手に、感動とも畏怖とも言えぬ感情に打ち震えていると、いきなり部屋のドアがガチャっと勢いよくあいた。
「ぎゃっ」
は思わず、手に持っていたものを一番近くにあった自分のカバンに突っ込んでしまった。
やばいと思った時には時すでに遅し、麦茶とコップを乗せたお盆を持ち怪訝そうな顔をした彼と目が合った。
「…ぎゃっ、って、何…」
「ななななんでもないの!なんでもないよ!」
「いや、でも今なんか」
「あっアイス!アイスね!アイス食べようとけるからね!」
「お前」
「あちゃーこりゃもうちょっととけちゃってるね!
こっち食べるからあべくんこっち食べなよさあ早く!」
「なんか」
「あーおいしいねアイスほんとアイスおいしいよアイスおいしい!」
「…」
その夜、
は自分のカバンを開けることができず、苦悶の表情で一人正座で己の愚かさと欲深さを恨んだという。
ぱんつ騒動女の子編