お正月の奇跡 



豆腐のパックを持って走った。込み合った神社じゃなくて、人もまばらにしかこないような小さな神社だけど、きっと神様はいるんだと信じて走った。
寝巻きのままで、つっかけで、髪もぼさぼさで、それでも走った。
転んでも何度でも起き上った。手のひらや膝が擦り剥けても走った。冷たい空気が肺に刺さって、切られるように痛かった。それでも、走った。




神様、神様、お願いです。
私に大事なものをくれた彼に、もう一度だけ会わせてください。
一人ぼっちで、全部我慢してた私に手を差し伸べてくれた彼に、ありがとうを言わせてください。





涙をぼろぼろこぼして、境内に走りこむ。ポケットにつっこんできた小銭を全部じゃらじゃらとさい銭箱にいれて、耳が壊れるくらいに大きくがらんがらんと鐘を鳴らした。




「神様、神様、神様!」




あの馬鹿に、生意気男に、豆腐小僧に、もう一度、




「おねがいです、神様!!!」




もう一度、会いたいんです。



















「で、気づいたらここにいたと」
「うん、なんか、きちゃった」
紋付袴姿の少年と、スウェット姿の女が、はは、と笑いを洩らす。
「会いたいと思っちゃったんだよ」
「俺も、神様にお願いしに来たんです」
「馬鹿だね、きみも」
さんこそ」
瞼が熱い。涙があふれてくる。
そのしずくをやさしくぬぐったのは、彼の、豆だらけの固い指先だった。
「責任もって、養ってあげますよ」
「はは、とりあえず、なにかあったかいもの飲みたいな」




笑いあう、この気持ちが、なによりも暖かい。
大切なものを手に入れたという喜び。これ以上にすばらしいプレゼントが、ほかにあるだろうか?
嬉しくてたまらなくて、へーすけくんの胸に飛び込んだ。
彼の腕が背中に回り、力強く抱きしめてくれることこそが、幸せのかたちのように思えた。









幸せのかたち