ふみくんと呼びたい 





「ふみくん、」
朝、教室のいつもの席に座ると、丁度ドアを開けて入ってきたが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「おはよう、ふみくん」
隣の席に座ると、鞄を机にひっかけながらにこにこ笑う。
「おはよー」
俺もへらっと笑って挨拶を返す。いつものことだ。




「ふみくん」
は小さいころから俺のことをそう呼ぶ。
普通、中学とかにはいるくらいで、幼馴染って恥ずかしくて、名字呼びとかになったりするんだと思ってたけど、は違った。
俺は、小さい頃は「ちゃん」と呼んでいたけど、中学で苗字に切り替えた。
だって変な噂がたったら向こうも迷惑だろうし、俺だってなんか、恥ずかしい。

(…本当は、ちゃんって呼びたい気持ちもあるよな、やっぱ)
は、とびっきり可愛いわけじゃないけど、よく気のつく優しい子だ。
顔だってそう悪くないし、背は少し高めだけど…あと、胸もぺったんこだけど…可愛い。と思う。
一緒にいて楽というか、音楽の趣味も合うし、聞き上手だし。
(でも、付き合いたいか、っていうと、ちょっと疑問)
自分の中に恋愛感情があるかどうか、いまいちはっきりしないのだ。




「ふみくん、どうしたの?」
ぼーっと考えていたら、が心配そうにこっちを見ていた。
「朝練、疲れたの?お茶あるけど、飲む?」




(そういうとこ)


「ねえ、ふみくん、なんだか変だよ、どうしたの?」


(ふみくん、かぁ…)









「ううん、大丈夫。ありがと、ちゃん」









その瞬間、チャイムが鳴って、先生が教室に入ってきた。
一斉に前を向き静かになった教室で、ちらりと横目にを見たら、顔が真っ赤になっていた。
(わ、)
口に出してみると本当になることもある。
赤くなったの、(ちゃんの、)その頬が急に愛しく感じた。









(…今からでも間に合うかな)









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