旦那争奪戦勃発 



「みはし、くん」
は今、心臓が爆発するという表現が本当なら、埼玉なんか軽く吹き飛ばせるくらいにドキドキしていた。
野球部のエース、三橋くんに、今日こそ思いを伝えるのだ。
放課後、クラスの隅っこにいた三橋くんに、おずおずと声をかける。
「はひっ、な、なに…、さん」
「あの、あの…き、今日ね、野球…」
「う、うん、野球?」
「お、おわ、おわったら、」
「う、ひ、」
周りから見ると相当まどろっこしい会話だろう。
「…裏門、のところで、ま、待ってる、から、」
「?…わ、わか、った」
返事を聞くと、ぺこりと猛ダッシュで教室から走り去る。
第一段階はクリアだ。




野球部の練習が終わるまで、ずっと本を読んで待っていた。
甘酸っぱい恋を描いた本で、ああ、こんな風になれたら、と妄想をする。
(みはしくんと、手をつないで、夕日を眺めながらお家に帰るの…)
(夏には海にいって、夕暮れの浜辺を二人で散歩しながら、いろんなことを話すの…)
妄想ばかりが先走る。うふ、うふふふ、と顔がにやける。
、さんっ」
とそこへ、とっとことっとこ、という表現が似合う走り方で、三橋くんがやってきた。部活が終わったのだ。
「あ、みは、し、くん、」
ぴよぴよひよこみたいな髪がかわいい。
「よ、
…なぜか後ろから、阿部くんがついてきた。
「…あ、あべ、くん?」
「なんか三橋が裏門行くっつうから」
「………」
、さん?」
いや、これは、自分が悪い。大切な話だから、一人できてね、といえばよかった。
とんだ計算ミスだ。空気読めよ阿部くん…
「な、なな、なんでもない、よ、」
心配そうにしている三橋くんに、あわてて両手を振る。
「い…あ…えっと、その…あっ、い、一緒に帰ろう、かなぁ?とおも、って…」
「う、うひっ、い、いい、よ、帰ろっ」
「う、うんっ」
お互いしどろもどろな状況なのに、一番何か言ってきそうな阿倍くんが何も言わない。
今日のところはあきらめて、また今度リベンジしよう…そう思って、3人して歩き出そうとしたとき、阿倍くんがそっと近づいてきて、耳元で囁いた。




「三橋には、まだ野球に専念しといてもらわねえとな」




………




姑さんが怖いのです