ふわふわ頭の彼が好き 





「りおくんもっとこいで!」
「もお無理だよちゃんかわって!」


山の上から街が見たい。
そう言い出したのわがままに、彼女にめろめろな利央が逆らえるはずもなく、自転車に二人乗りして穏やかな坂道をゆるゆる登っていた。
だんだんと遠ざかる街の喧騒。あわい、落ち葉の匂い。鼻の頭が痛い。雪が降るのかもしれない。


「ねえ、さむいね!」
「さむいけど、おれ、あっつい!」
「耳あったかくしたげる!」
が両手で、痛いほど冷え切った利央の両耳をふさぐ。
利央が送った手袋をはめたの手は暖かかった。
一生懸命、全力で自転車をこいで、こいで、こぎつづけて、ようやく休憩所のような開けた場所についた。


「ねえちゃん、耳もういいよお」


自転車を止めて、振り向こうとしたら、ぐっと強い力で耳を押さえつけられ、無理やり前を向かされた。
なに、なになに、と呟く自分の声も、内側にくぐもって聞こえる。




「だいすき!」




小さく、それでもしっかりと、彼女の叫ぶ声が聞こえた。
手のひらを通して、愛をこめて送った布を通して、彼女の体から自分の体に、だいすきが流れ込んでくる。
いとおしくて、こらえきれなくなって、無理やり振り向いて彼女の体を抱きしめる。
がしゃんと硬い音が寒空に響いた。自転車の倒れる音。




「おれもだいすき」




左耳にそっと唇をあてて、震わせるように声を出す。
心臓と心臓がくっついて、一つになったみたいに、心の中で叫び続ける愛がまるで血液のようにお互いをめぐる。
かっと熱くなった耳に、あぁ、もう、かわいい、たまらない、と思う、この心だってきっと、届いているのだ。









めぐりあい