野球少年豆腐乗せ 



調理実習があるというので、通学鞄とは別の袋に豆腐を入れて通学路を歩いていた。
隣にはいつもと同じように、お付き合いさせていただいているゆうくんがいる。
「いいお天気だね」
「そうだね、しばらく雨は降らないって」
「野球がいっぱいできるね」
「うん、うれしいよ」
ゆうくんはちゃりちゃりと自転車を押して、 はその横をゆっくり歩く。
朝練の時間に私が付き合っているのだ。ゆうくんと一緒にいるためなら、早起きだってつらくない。
ちゃん、今日はお豆腐持ってきたんでしょ?」
ゆうくんがたずねる。
「うん。絹豆腐にした。 、お味噌汁のお豆腐は柔らかいのが好きだから」
がさごそと袋から出して、じゃじゃーんとゆうくんに見せつける。
「あは、崩さないように気をつけてね」
うん、大丈夫だよ、と言おうとしたら、小石に躓いてずっこけた。
手から豆腐のパックが奇麗な放物線を描き、ゆうくんの顔面へと飛んでゆく。
びしゃっ、とみずみずしいおとがして、ゆうくんの顔を見ると、衝撃でパックが破けたらしい豆腐を頭からかぶりながら、ぽかんと自転車のハンドルを持ったまま突っ立っていた。



「ゆ、ゆゆゆ、ゆうくん、」
「…はぇ?」
「ごめ、ごめんなさい」
「あ、豆腐…」



自分の頭にのっかった豆腐の残骸を手で触り、そしてなんてことだろう、にこっと笑ってこう言った。



「崩れちゃったねえ」



ゆうくんはそれでいいの…?
はなんともいえないひきつった笑みを浮かべ、「うん、崩れちゃった」とへたりこんだまま呟いた。


豆腐の角に頭をぶつけて