いやらしんごがいやらしくなかったら 



憧れの先輩、島崎慎吾さんと付き合い始めたのは、つい三か月前のことだ。
みんなから「いやらしんご」と呼ばれている彼に、私はいつもドキドキさせられている。
今日も一緒に帰る時に、すっと指をからめて手をつないできた。
そのあまりの自然さにあっけにとられて、ワンテンポ遅れて頬が染まる。
「あの…」
「うん?」
「さ、寒いですね」
「そうだなあ、もう冬だしな」
「…ですよね」




慎吾さんがCDショップに寄りたいというので、私も付いて行った。
あのアーティストはどうだとか、こっちのアルバムのほうがいいだとか言って、結局視聴のヘッドフォンを二人で使うことになった。
ぎゅう、とほっぺたとほっぺたがくっついて、今までになく顔が近い。
実は二人はキスもまだで、顔がこんなに近づくのは初めてだ。
「(い、いやらしいことされないかな)」
しばらく、自分の鼓動と流れる音楽を聴きながら、ぎゅっと目をつむってた。
すると、何をされるわけでもなくヘッドフォンが外され、慎吾さんはCDを持って「俺、これ買ってくるわ」と言い残しレジへ行ってしまった。
けれど、くっついたほっぺたと耳の熱さと、真っ赤に染まった後ろ姿の耳たぶに、なんだかすごくほっとして、同時に彼に対するいとしさがじわじわと胸にしみてきた。




「しんごさん、だいすきっ」
「なんだよ、急に!」




抱きついた体も温かくて、ああなんて幸せなんだろうと頬が緩んだ。




CDなんか買わなくたって