肉は文化 





結局嶋本さんは、案外早く戻ってきた。
「ほな、お先失礼します」
「し、失礼しまーす」
そして荷物をちゃちゃっとまとめ、を連れて基地の外へ出る。
「待たせたな。腹へっとる?」
「正直飢餓状態です」
こんな状況で腹も減らんわ!こちとら乙女だぞ!と言いたいところだが、前日の昼から急がしくて何も食べていない。
正直何か食べられるものがあるならがっつり食べたい気分だ。
「ほな、約束通り焼肉いこか」
冗談だと思っていたら、焼肉は本気だったらしい。
「私、結構食べますよ」
「俺もや。食い放題行くか」
「やったー」




しばらく夜風に当たりながら歩くと、だんだんと食事処が増えてきた。
「ん、ここや」
嶋本さんが示したのは、比較的大きな焼き肉店で、おそらくチェーン店なのだろう、夜道にまぶしい看板を掲げている。
からんと入口の鐘を鳴らして店内に入ると、さっそく店員が寄ってきて「何名様ですか?」と聞いてくる。
「二人、禁煙な」
席に案内され、座るなり「食い放題、男一人と女一人で」と注文する。
かしこまりました、と店員が伝票になにやら書き込み、それを見ていたに嶋本さんが「何食う?」とメニューを見せてきた。
「んと…ハラミ…とか」
「ほな適当に頼むで」
ぺらぺらぺらーっと早口で注文して、水を飲む嶋本さん。
よくよく正面から顔を見れば、つんとしたような表情で、でもどこか憎めない愛嬌があるようにも思う。
この人の気まぐれで、自分は今食いっぱぐれずに安心していられる。
「…あの」
「ん?」
「ありがとう、ございます」
「ええって、野生の女子高生に肉食わせる金くらいもっとるから」
「いや、そうじゃなくて」
「世話したるっちゅう話か?」
「それです、それそれ」
「そんなん…」
水をぐいっとあおって、一呼吸おいて嶋本さんはの目をじっと見て言った。
「もし俺とお前の立場が逆やったら、お前、同じことするやろ」
ドキっとした。なんだかいろいろ見透かされているようだ。
「…野生のおっさん落ちてたら、保護しないとって思いますね、確かに」
「せやろ。ほな、今はとにかくなんも考えんと、肉食って体力つけ」
ちょうど、注文した品が運ばれてくる。
「野垂れ死にはさせん。ひもじい思いもさせん。危ない目にもあわせへん」
肉を七輪の網に乗せながら言う。
「帰る方法も…今はわからんし、俺にはずっとわからんかもしれへんけど、とにかくどうにかして帰したる」
せやから…と続ける。
「泣いてもええけど、不安がらんでええねんで」
いつの間にか流れていたの涙を、不器用な指先でそっと拭ってくれた。
「おっちゃんが守ったるさかい」
ぐす、と鼻をすすって、小さくうなづいた。
なんだか肉も塩味がきいたような気がして、それを気にしないようにお腹いっぱい食べた。
それだけ食えるなら心配いらへんな、と嶋本さんが笑うのを見て、泣きながらも笑った。


ご飯食べると安心するよね