クリスマス 



とりあえずの状況を説明したところ、彼は「枠線ぶち破ったりホワイトで修正したり勝手にページめくったりするくらいだから、こんなこともある」とわけのわからないことを呟いて納得したようだった。
そこでまあ、いつまでもこうしていてもらちが明かないし、今夜は寝ようということになり、彼はソファで、私はベッドで眠りについた。




「おはようございます、さん」
「お、おは…今何時だと思ってん…」




彼の声で目が覚めて、ぼやけた視界にとらえた時計の文字盤は5時半を指している。




「すみません、お腹減っちゃって…」




申し訳なさそうに言う彼に、まあ育ち盛りっぽいししょうがないか、とひとつ伸びをして起きる態勢に入る。




「いいよお、しょうがないね、お腹は減るよね。ご飯作るけど…っていうかパン焼くけど、食べられる?」
「ぱん」
「ぱんです」
「ぱん?」
「ぱんです」




起き上がり、伸びをしてベッドから降りる。床が冷たい。
電気が止まっているから暖房もつかないし、パン…焼けない。トースターって電気で動くんだね。




「…電気料金払ってくるから、ちょっと待ってて…」
「でんき?」
「ついでにめんどくさいからコンビニでご飯買っちゃおう」
「こんびに?」
「へーすけくん、私の服着れそうだね。ジャージ貸すから着替えて一緒に行こう」
「じゃーじ?」




ここから頭出して腕通して、と軽く教えてそっぽをむく。なにせ小さなアパートなもんで、部屋がひとつしかないのだ。
風呂場の脱衣所で着替えてもらおうとも思ったが、一つ気になることがあり、こっそりのぞいて見ようと思いあえて同じ部屋にした。
もそもそ、と服を脱ぐ音がする。今が…好機…!




ちらっと見た後姿は、やはり、思ったとおり、




「ふんどしいぃぃぇぁ!」
「うわああ見ないでくださいよおお!」




かなり怒られた。正座をさせられた。年ごろ(と口にする時なぜか少しもごもごしていた)の女性が男の着替えなど覗くものではないと言われた。
年ごろだからこそ覗きたいと声を大にして言ったら冷たい目で見られた。心がくじけた。




「私もうこの先やっていけない…」
「あんなことでへこんでてどうするんですか…」
「いや、なんかもう…だめだわ…」
「ところでユキさん、あのあれなんですかあれ」
「車です、電信柱です、コンビニです、カップルです」




そして思い出した。今日はクリスマス当日だ。まあ、形はどうあれ美少年とともに時間を過ごせるのだから、これまでのクリスマスよりはるかに有意義だとは思う。
しかし、スウェットとジャージの部屋着コンビでコンビニとは…ダジャレか!
しかもケーキを買いに来たとかでなく、電気料金払いに。




「…悔しいからケーキ買うか」
「けーき?」
「お菓子だよ。甘いの。クリーム。いちご」
「なんだか説明が雑になってません?俺なんも理解できないままこんびに、ってとこについちゃいましたよ」
「習うより慣れるの。食べればわかるの。昔の偉い人も言ってたでしょ?いけばわかるさ…えーと」
「わっ、ウィーンて!扉が!」
「自動ドア。かごにほしいものいれてきなよ、私レジにいるから」




結局、お菓子や飲み物、アイスとケーキ、少しのアルコールを買って、部屋へ戻ってきた。
電気はすぐに使えるようになって、横着して払わずにいるとこうなるんだと思い知った。とんだ出費だ。




「おにぎりが…何かに包まれています」
「これねーこうやってひっぱって…のりがちぎれないようにさー、ほらこう…あっ」
「ちぎれました!」
「ちぎれましたね!ちくしょう!」
「これなんですか?」
「ナポリタンです」




レンジでチンして温めたパスタをもぐもぐ食べる。へーすけくんはおにぎりをぱくついて、時折こっちを見ていたので、ナポリタンを少しフォークに巻き取り「あーん」をしてあげた。




「あ、あーん」
「ほうらお食べ、お姉さんの手ずからパスタを与えて進ぜよう、もりもりお食べ」
「食べづらいんですけど…」
「…」
「いや、そんな見られても食べづらいものは食べづらいです」









クリスマス当日、部屋着の二人