クリスマス 



だるい。金がない。宝くじ当たらないかな。買ってないけど。
そしたら仕事辞めるし。3億とか。マジハンパネェ。買ってないけど。




さん、電車きましたよ」
「なじんでるねーきみ」




というわけで、今日はへーすけくんの着るものを買いにきた。
いつまでもふんどし一丁ではかわいそうだし、ジャージ姿じゃ彼の美貌もかすんでしまう。
年末セールとかでまあ安いべ…そんなきばらなくてもこの子ならユニクロでもしまむらでも着こなせる。うん大丈夫。
と思ってでてきたので財布の中は心もとない。
もともと学業とアルバイトで時間を浪費してきた身である。
学業といっても趣味のようなもので、将来なんの金にもならないようなものだし、アルバイトはとにかく生活費を稼ぐためだ。
親元を離れたのだから、自立して生きていかなければならない。ゆえに仕送りはもらっていない。
学費の一部を負担してもらっているため、それ以上の迷惑はかけられないと思っている。
まあ何が言いたいかといえば、つまり金がないのだ。




「さんばんせん…から…」
「これこれ、これに乗るの」
「はー、人がいっぱいいますね」
「都会だものよ。私ら田舎っぺとは違うんだべさ」
「なんでズーズー弁ですか。うわー押しつぶされそう!」
「ぐえっへーすけくんかばって、私を守って!」
「無茶な…さん自力で」
「誰がきみに飯食わせてんのかな」
「大丈夫ですかさん、ほらこの隙間に」




ドアとへーすけくんの体の間に、ぎゅっと押しつぶされる。




(い、ま、気づいた)




どうして今まで気づかなかったのかが疑問だ。




(近い…と…男の子、の、匂いがするな)




昔、そういえば、と思い出すくらいの昔、私も恋をしていた。
けれどそれも、何か違うような気がして、私はその恋を捨てた。
というか、忘れたというか。いろいろあった気がするが、人間都合の悪い記憶は忘れていくものだ。覚えていない。
ただあの時想っていた彼の匂いが、へーすけくんの胸にうずまっているこのときの匂いと少し違ったことはなんとなくわかる。




(男の子なんだもんな…ちぐはぐ、でも、一つになりたがる生き物なんだ、私たち、男と女は)




さん」
「なんだね少年」
「大丈夫ですか、顔赤いですけど」
「あっついんだよ」
「おります?」
「次だし、駅」




結局、やっすいけどそれなりの見た目の服をいくつか見つくろって、ついでに下着も何着か買って、帰ってきた。
電車のなかでまた、へーすけくんにかばわれながら、私は今度はドアのほうを向いて立った。
背中にあたる彼の心臓がかけ足に脈打つのを感じて、私は少し、切ない気持になりながら、沈みかけの夕日の眩しさに目を細めた。









男の子と女の子