とりあえず出会い
なんでだろう。初対面の、こんな怪しい女に、この人は優しくしてくれる。
理由を聞いてみたい気もするが、もし性的なこと目当てとかだったら嫌だから怖くて聞けない。
「あ、別にエロいこと考えてるわけやあらへんで」
「…はあ」
見透かされた。
「おっちゃんこれでも公務員やねん。お国のために働いててん」
「…見えない」
「理由が『小さいから』やったらどつきまわすぞ」
「てゆか、さっきから『おっちゃん』て」
「こう見えても三十路やねん」
「見えない!」
「理由は?」
「…ちいさ…わかわかしいからです」
「せやなあ、ほんま俺ぴっちぴちすぎて困るわあ」
という会話をしながら向かっているのは、嶋本さんの勤め先であるという『はねだ…ナントカカントカ隊』の基地である。
家に行くにしろなんにしろ、とりあえず一度職場に顔を出さないといけないらしい。
というか、今日は遅くなったけど一応出勤して、仕事をこなしてから帰るから、それまで待て、と言われた。
「嶋本さんのその、…ナントカ隊」
「特殊救難隊な」
「とくしゅきゅうなんたい」
「おお」
「…は、どんなところなんですか?」
「どう、って…せやなあ…」
うーんと考え込みながら歩く彼を、今更ながらじっと見てみる。
くるくるの短い天パ?に、小柄な体格、眉尻はきりりとあがっており、意志の強そうな顔つきをしている。
より身長が低いのに、どうも大柄な印象を与える。多分、喋り方だの態度だのがでかいんだろう。
「…海のスーパーマン?」
「ぶふ」
吹きだしたらどつかれた。
「いたい…」
「海の平和を守っとんねん。わろたらバチあたるんは当然やろ」
「嶋本さんからばちがくだるのは解せな…すみません、とてもすばらしいお仕事だと思います」
ぎゅっとゲンコツを握るのが見えたので、あわてて言い直す。
この人、暴力的。暴力よくない。
「というか、嶋本さん」
「なんや?」
「なんで私のこと、引き取って…引き取って?くれるんですか?」
自分の言い方にもちょっと疑問がわく。これじゃまるで里親探しの犬猫みたいな扱いだ。
「そんなん、言うたらきりないけどな」
「気になります」
「ま、居場所のない子ォほったらかしとくんもアレやしなあ」
「それだけですか?」
「さっきも言うたけど、俺一応公務員やし」
「…それだけ?」
言うとまた、考え込んだ。
うーん、せやなあ、なんでやろなあ、と呟きながら歩く。
そして、羽田特殊救難隊基地の入り口についたころ、ぽつりと口を開いた。
「ビビッ…と、きたから、かなあ」
「…ぶふ」
またゲンコツをくらった。
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